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次の文章を読み、下線部(1),(2),(3)を英語に訳しなさい。 (35点)
最近、ある先生から面白い話を聞いた。(1)アメリカで、人間の動物観を調査している研究者がいるという。例えばいろいろな人に「一番美しい動物は何か」という質問をする。(2)その答えが、職業や、年齢や、生活環境等によってどう違うかを調べて、人間が動物をどのように見ているかを分析するというものである。
この話を聞いて、日本でも同じような調査をしようということになったが、どうもうまく行かないらしい。同じ質問に対して、水牛とか、はっきりした答えが返って来る。ところが日本では、どうもはかばかしくない。時には、質問の意味が通じないのではないかと思われることもある。そこをいろいろ説明して、何とか答えて貰おうとすると、「そうですねえ、夕暮れの空に小鳥が群れをなしてぱあっと飛んでいるところかな」といったような返事が返って来る。これでは、日米動物観の比較など成り立たない。なるほど文化の差とは大きいものだというのが、その先生の感想であった。
(3)だがよく考えてみれば、そのようなギャップこそ、絶好の比較研究の材料である。それは当たり前のように思っていたことが決して当たり前ではないという事実に気づかせてくれる。「一番美しい動物は何か」という設問は、誰にでも通ずるもののように見えながら、実はそうではない。それは「美しい動物」というものが存在するということを当然の前提としているからである。逆に言えば、そのような前提が広く認められていないような世界では、設問自体が無意味なものとなる。もう少し一般化して言えば、「美」というものを、実体として存在すると考えるか、状況によって成立すると考えるかの違いなのである。
――九州大学 前期日程(2月25日実施)――2003年
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